【据置期間を延ばす方法とは】
こんにちは。税理士の黒木佐由里と申します。
新型コロナウイルスが世界を席巻して、一年以上が経とうとしています。
未曽有の経済危機の中、先の見えない状況で、いまだ多くの企業が危機的状況に晒されたままです。
それにも関わらず、企業の倒産件数は前年同月比31.5%減少の446件と、8ヵ月連続で前年を下回っています。
(独立行政法人 労働政策研究・研修機構 公表データより)
なぜこれだけの経済危機にも関わらず、倒産件数が減少しているのでしょうか?
その理由は、国の手厚い経済支援があったからです。
様々な助成金や、無担保無利子による緊急融資といった、かつてない規模の経済支援の恩恵で、倒産する企業数自体は減少しています。
しかし、首都圏の1都3県に関してはいまだ緊急事態宣言が延長され続けており、まだまだ経済復興の兆しは見えていないのが現状です。
このような状況の中、多くの企業が利用している緊急融資に関しては、緊急融資を受けた企業の大半が据置期間を「1年以内」に設定しているという実情があります。
コロナによる緊急経済対策が閣議決定されたのは令和2年4月7日ですから、緊急融資が始まってからすぐに融資を申し込んでいた多くの企業は、まもなく据置期間が終わり、返済が開始することになります。
経済が回復していない現状で据置期間が終われば、このまま返済がままならず、資金繰りに困窮する企業が増えてくるのは明らかでしょう。
それでは、すでに据置期間を1年で設定してしまっている企業は、どうすればいいのか?
答えは、「据置期間を延ばしてもらうこと」です。
ではどのような方法で据置期間を延ばすことができるのか?
今日は、まもなく終わる据置期間の延ばし方について、わかりやすく解説します。
【据置期間を延ばす2つの方法】
据置期間を延ばしてもらうには、
①契約条件変更
②借り換え
以上の2つの方法があります。
ではまず、①契約条件変更とはどのような方法でしょうか?
契約条件変更とは、いわゆるリスケと呼ばれるものです。
リスケジューリングの略で、ビジネス用語としてもよく利用されているもの。
簡単に言うと、このままでは予定通りに返済することが難しいので、返済計画自体を変更してもらうよう、貸し手にお願いする方法です。
すでに返済が滞った企業や、再生計画を行う企業などが活用する方法です。
リスケを受けてくれるかは金融機関次第ですし、リスケをすると新たな借入も難しくなってしまうため、今回の状況ではあまりおすすめの方法とはいえません。
そこで、おすすめしたいのは②の借り換えという方法です。
借り換えとは、現在借りている金額と同額または増額した金額を新たに借入し、そこから現在の借入を返済する方法です。
既存の契約を新たな契約へスライドするイメージですね。
例えを使うと、
・契約A 借入額500万円 元金返済はR3年5月から開始
という契約があったとします。
そこで、据置期間を5年間延ばすために同額の借り換えを行ったとしましょう。
すると、
・契約B 借入額500万円 元金返済はR7年5月から開始
という新たな契約を結びなおすことになります。
その場合、新規の契約Bで借り換えた金額である500万円を使って、契約Aの借入を全額返済して(したことにして)、
据置期間が5年延びた新たな借入契約へとスライドさせるという方法が「借り換え」です。
ここに実際のお金のやりとりは生じません。
新しく借りたお金を使って、既存の借入を返済するという書面上のやり取りになります。
借り換えで借入額を増額させるなら、増額部分だけが金融機関から振り込まれることになります。
例えば、500万→700万に借り換えするなら、新規契約の700万のうち、500万は既存の借入の返済へ充てられ、残りの200万だけが実際に入金されるといった具合です。
借り換えた場合には、借入の契約自体が新たな契約となるため、据置期間を5年に設定すれば、返済の猶予期間が大幅に延ばせることになります。
【どのくらい据置期間を延ばせるの?】
緊急融資が始まった際、制度上は「据置期間5年」となっていましたが、金融機関側が信用保証協会に忖度し、短めの据置期間で申請したケースが多かったようです。
しかし信用保証協会にはそのような忖度は必要なかったようで、「据置期間5年で」と申請した案件の多くは5年で通っています。
今でも据置期間5年で申請しても、比較的スムーズに認めてもらえる場合が多いです。
【借り換えは簡単に認めてもらえるの?】
もしも借換で大幅な増額をする場合には、信用保証協会も「返済可能性」を重視するため、審査が厳しくなる傾向にあります。
しかし、小幅の増額借り換えや、同額での借り換えの場合は、比較的にスムーズに認められているケースが多いようです。
据置期間を延ばすことを目的として同額で借換を行うのであれば、簡単とは言いませんが、認められる可能性が高いので、検討してみてくださいね。
【借換を申し込むなら、今すぐ申し込む必要があります】
今回おすすめしている借換ですが、R3年の3月31日迄に信用保証協会に申請しないと、せっかく借換ができても、金利や保証料が必要になってしまいます。
また、注意点として、R3年の3月31日(水)までに金融機関に申し込めばセーフではありません。
3月31日迄に、
金融機関から信用保証協会に保証申込を行わなければ、
この制度を利用できないのです。
金融機関は、企業から融資申し込みの依頼を受けてもすぐに信用保証協会に申請できるわけではありません。
様々な書類の準備や稟議などがありますから、どんなに急いでも1週間は必要です。
同額借り換えや小幅の増額借り換えの場合、金融機関は申請書や稟議書を作成する手間がかなり省けますので、スムーズに受け付けてくれる可能性は高いです。
それでも、営業日などを考慮すると、
実際の借換のデッドラインは3月23日(火)前後となります。
悩んでいる暇があれば、今すぐ動きましょう。
当事務所は「一般社団法人 融資コンサルタント協会」の会員であり、融資の専門家です。
創業融資をはじめ、様々な融資の実績が御座います。
初回相談は無料ですので、借換を検討されている方はぜひ一度ご相談下さい。
この記事が据置期間に悩まれている方々のお力添えとなれば幸いです。